■ サザエさんちにみる二世帯住宅の課題

年始からはじめた東京オペラシティでの企画展「二世帯住宅の・い・ま・」というテーマを私なりに掘り下げるにあたり、二世帯住宅のポイントをまとめてみました。

展示会場では、私が設計したすまいを含め7事例を取り上げそれぞれにコメントを加えて紹介しています。それらの事例から私がポイントとしてあげたのは以下の3点です。

●共用部面積と生活ルールの量は比例することを現実視する
●家長が複数名居る場合は共用部を減らす努力が肝要である
●世帯主が家長とは限らない

言い換えれば、共有部分が多くなると生活する上でのルールが多くなるので、強力なリーダーが存在しない場合はできるだけ共有部を少なくした方が良いということです。うまくいかないのです。
『せっかく一緒に住むのだから、共有できる部分は節約のために一つにしよう』という短絡的な考え方は不幸をまねくことになりかねないということです。
また、一軒の家の中で現実的に誰が船頭になるのかを見極めることも大切で、一人の船頭で充分荒波を渡っていける場合は共有部分が多くても良いでしょうが、実態として船頭が二人いるような場合は船を二つにしないと荒波を乗り越えて行けないのです。

世間で最も知られている2世帯同居事例のひとつに「サザエさん」があります。わかりやすいので、サザエさんの2世帯同居について観察してみました。黄色が2世帯で使う共有部で、赤が波平家族、青がマスオさん家族の専用部分です。

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すまいの形態としては、5Kの平屋といった特別に2世帯住宅の特徴をもっていません。サザエさんの同居形態は、長女のサザエさんが夫のマスオさんと実家である波平家に同居するというパターンです。奥さん側に世話になる旦那さんを「マスオさん」と表現されるくらいにまでなった2世帯同居がうまくいくケースです。このケースはマスオさんや波平夫妻の努力の結晶です。この家族の場合、船頭はサザエさんの一人だと考えます。サザエさんを船頭として、他の家族はサポートにまわっているのではないでしょうか。番組最後、サザエさんが皆を引き連れて三角屋根の家に入っていくというシーンがあります。あの映像がそれを物語っています。

ただし、サザエさんはTV放映がはじまって、45年ほど経過しているにもかかわらず家族全員成長が止まっているため、住宅問題は起こっていません。だからいつまでもこのすまいのままで暮らせるという非現実的な面があります。
おそらく、あと2〜3年もするとここでの暮らしが難しくなるのは簡単に想像できます。
まずは、子供部屋問題カツオとわかめがいつまでも一つの部屋では成立しなくなります。タラちゃんもそのうち自立してきます。なので、子供を中心とした家族の成長とともにすぐに成立しなくなるのです。いずれ波平も定年退職し家にいることが多くなるでしょう。

そこで家をどうするかという現実問題に直面します。サザエさん夫妻が引っ越してゆくのか。余っている隣地にマスオ家族の新居を建てるのか。増築してスペースを確保してゆくのか。長谷川町子さんなら、どのようにして、この問題を解決していったでしょうか。観てみたいところです。

私であれば、サザエさん家族が近所に戸建てを新築し、カツオが長男として家を引き継ぎ、わかめはお嫁にゆくという一番ポピュラーなストーリーにするかもしれません。それでは面白くないでしょうけど、最も平和で現実的だと思います。でも、サザエさん一家なら、どんな形態の2世帯住宅としても、うまくいくのではないでしょうか。サザエさんは、家族を運営してゆくにあたり、皆の仲が良いということが一番大切であり、ソフトがハードの問題を解決するということを教えてくれています。