■ 建築工事は手品ではない

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この写真は多くのことを考えさせてくれる。たまに他所の工事現場を拝見させてもらうことがあるが、これほど割り切ったやりかたを見るのは初めてだ。建築コストについて考えているときにたまたま目に飛び込んできた。

おわかりだろうか。すまいが完成してしまえば見えなくなるのでこのタイミングでしか確認することができないこと。建築を法律でコントロールする建築基準法ではこれについて触れてはいない。違法行為では無い。

一般的なやりかたであれば、鉄筋の下にポリエチレンフィルム(いわゆるビニールシートのようなもの)が敷かれている。それは建物の下から湿気が上がってこないようにビニールで遮断してしまおうというもの。ただし、建築の地面からの防湿は、ポリエチレンフィルムを敷くか防湿コンクリートを打つことのどちらかを選択すれば良いのだ。この現場は建築の重さを地面に伝える基礎の耐圧盤(基礎スラブ)を防湿コンクリートと併用解釈してポリエチレンフィルムを省いている。

この写真は部分的な写真なので全体像が見えないが、基礎全体がこの仕様になっている。ポリエチレンフィルムだけではなく捨てコンが打たれていないのだ。これも合法。違法行為では無い。鉄筋を配筋するときに図面通りに施工しやすいように「墨」を出す。この墨があれば寸法的に間違わずにきちんと施工することがしやすくなる。この墨は地面に描くわけにはいかないので、簡単なコンクリートを打ってそのコンクリートの表面に図面どおりにしるしをつけることなのだ。これを省略すると言うことは、熟練の基礎工事職人でなければできないもの。あるいみ、この捨てコン省略は施工に自信があることの表明だと受け取ることもできる。

さらにもう一工程。砕石事業がない。地面をよく突き固めて不等沈下が無いように工事を進める。基礎の一番下に昔で言えば「ぐり石」最近では「砕石」あるいは「砕コンクリート」を敷き詰めまんべんなく突き固める。宅地造成などで新しく造った地面などでなければ、地表面は充分しまっているので「その必要なし」と判断することも可能だとは思う。間違って多く地面を掘ってしまったりしなければ砕石事業は不要だとも。

これらの「ポリエチレンフィルム」「捨てコン」「砕石」を省くことでどれくらいのコストを抑えることができるのだろう。
延べ面積35坪程度の直近の見積もり書を見てみた。
「ポリエチレンフィルム」〜 一式6500円(材料費のみ)
「捨てコン」〜 63,000円
「砕石事業」〜 24,750円
ざっくり10万ほど。
たしかにこの工法を採用することで、10万円ほどコストを省くことができるのだ。しかし、配筋工事の最中に雨でも降ったらぐちゃぐちゃになり工事どころでは無くなるだろう。地面はぬかるみ、基礎工事で最も大切な「かぶり厚」(鉄筋のまわりをコンクリートで被覆する厚さ=法律で決まっている)を確保することもままならなくなる。しかし、10万円である。10万円稼ぐためには大変なことはだれもが理解できるところ。

建築コストは多くの材料と人件費の積み上げで成り立っている。安く建てたい気持ちは理解できるが、価格を抑えることは工事方法の工夫で省けるところは省くということをやるしかない。建築は手品ではないのだ。
この写真は多くのことを考えさせてくれる。